渡り鳥ペピン

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世界の果てには小さな喫茶店が一軒つっ建っていただけでした。
それ以外には、まぁ特に何もありません。


旅を終えたばかりの飛べない渡り鳥のペピンは疲れきって言いました。
「どうして世界の果てに喫茶店が?」
声にして言いました。

ペピンの旅は長く、困難とその超越の、途方もない、もう本当に途方もない繰り返しでした。
それでもペピンは硬く信じていたのです。
この旅が終わるとき、
そこには豊穣の大地や美しいビーチのような、
約束されたイノセントな「答え」があると。


しかしついに辿り着いたその場所にあったものは、
世界中のガラクタで継ぎ接ぎしたようなちいさな喫茶店だけでした。


ペピンは長い間立ち尽くしていました。
彼にとってそれはあってはならないことだったのです。
このような光景は。


目の前にはどこまでも圧倒的な、孤独な海が広がっていました。


「間違いない。ここが世界の果て。おれの旅が終わる場所なのだ。結局。」


泣くことができたならどれほど楽になったでしょうか。
でもペピンは泣くにはあまりに疲れ過ぎていたのです。


大いなる旅の受け入れ難い結末はペピンに絶望すら許さず、
宿命的な力でただその喫茶店へと無気力に向かわせました。



【パタゴニアの南喫茶店】


小さな看板にはそのように書いてありました。




2007/6/16


.. . . ..... .. .


パタゴニアの南喫茶店
店番1号
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by southpatagonia | 2009-12-14 19:59 | about us | Trackback | Comments(2)
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Commented by s. at 2009-12-17 07:17 x
でも、ペピンはそれから何を思ったのでしょう。

自分の旅を、たとえ孤独でも、ゆっくりと思い返せる場所を
「間違いなく」見つけたのではないでしょうか。

そういえば店の中にあるこのガラクタのようなものは
いつかの川のほとりで見た空き缶と一緒じゃないか、と。

飛べないペピンは、目をつぶればどこへでも行ける
そんな羽根を、喫茶店の中で手に取っているのかもしれません。
そして、それがあれば次の旅にすら、飛べずとも歩き出せるのです。
Commented by southpatagonia at 2009-12-17 22:56
ゴールはいつもわりと地味なもの。

でもひたすらに歩いてきた遥かな道のりだとか、
「あなたは本当によくやった」と、大切なひとからの抱擁と祝福だとか、
正直に生きた誇りだとか。

そうゆう些細なゴールのオマケが、
その後の終わりゆく人生の何物にも代え難い大きな救いとなる。


ペピンはねぎらいと祝福の温かいミルクティーを飲みながらきっとそのことをちょっと不満気に想うでしょう。
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